環境省小冊子「よくわかる低周波音」

P2.音って何?

AHO1.音は空気の微小な圧力変動です

ちがいます。音は、物理的には、空気や物の「振動している状態」が伝わっていく現象です。

  1. 圧力変動も音に伴う現象の一つですが、音を特徴づけるにはそれだけでは不十分です。空気の移動速度の変動も併せて評価する必要があります。 一般に、前者の値が大きな場所では後者の値は小さくなり、後者の値が大きくなる場所では前者の値が小さくなります。
  2. 記述の根拠を前向きに推測するならば、圧力変動が一般的に騒音の大きさを表わす目安として使われているためと考えられます。
  3. 音波にも大きさがあり、同じ形(パターン)の繰り返しの一つ分の長さを波長といいます。普通に聞こえる高さの音の波長は、人のサイズよりも小さく(440Hzでおよそ77cm)、低周波音と呼ばれる音の場合は、人のサイズよりもずっと大きくなります。(100Hzでおよそ3.4m,30Hzでおよそ11m)
  4. 一般的な騒音で問題にされる「耳でよく聞こえる高さの音」の場合は、波長が人のサイズよりも小さいので、 圧力の変動が大きくなる場所の範囲・時間と、反対に空気の移動速度の変動が大きくなる場所の範囲・時間の違いのスケールは、 人のサイズに比して概ね小さくなるために、測定に対して場所による違いは明確ではなく、 記述はあながち間違いではないと言えます。
  5. しかしながら、低周波音の場合は、時間や場所に依り、圧力変動が主である部分と、速度の変動が主である部分が人のサイズに比して無視できないバラつきが現れる場合が目立ってきます。 つまり、耳で聞こえる一般的な騒音の考え方を、低周波音に適用することにはそもそも無理があります。 故に、低周波音に関しては、音は空気の微小な圧力変動として特徴づけることは適切ではありません。

つまり、圧力の変動だけで低周波音を測ると音波自体の大きさを過小評価してしまう恐れがあるということです。

共鳴

  1. 建物の壁と壁の間、家の内側の壁と壁の間など、音が壁で跳ね返って往復運動し、 さらにその往復時間が、音の周期(時間的なパターンの繰り返し一回分の時間)の整数倍になった場合、 音はその場所に留まり集積されてとても大きくなります。 これを共鳴現象といい、ローカルに留まっているかのように見える波を定在波(あるいは定常波)といいます。 いわば、低周波音の巣です。
  2. もしも、壁と壁の間で手を叩いたときに、「ビヨョョョ〜ン」と響く場合、そこは低周波音の巣になる可能性があります。
  3. 低周波音が定在波になっているとき、以下の図のように、圧力変動が顕著になる部分と、空気の移動速度の変動が顕著になる部分にハッキリ別れます。

家の壁と壁の間の共振
壁と壁の中間では空気が自由に動く。(基本振動での共鳴の様子)

家の壁と壁の間の共振アニメ版
空気の動きの大きなところでは圧縮も伸長もされないので、圧力変動はごく僅かな大きさにとどまります。

AHO2.鼓膜を振動させることにより、人は音として感じます

低周波音に因る刺激が人体に影響を与えるのは、鼓膜からとは限らないので、この記述が正しいとするならば、低周波音を「音」と呼ぶことは不適切であるということになります。しかしながら、後の記述において、低周波音も音の一種であるとしているので、ページ間で内容の食い違いがあることになります。記述の真意は低周波音に因る人体への刺激は耳で受け取るものに限られるというイメージを読者に植え付けるものでは無いでしょうか。

AHO3.音の大きさは音圧レベルで表わし、単位はdB

dB とは、もともと倍率を表わす単位です。基準となる圧力振幅の何倍かという表現なので、基準の定め方がわからないと意味を成しません。

「y 倍」が「x dB」であるとは、
db

つまり、0 dB で基準値。10 dB で基準値の10倍、20dB で基準値の100倍、-10dB で基準値の10分の1。

どういう基準で「音圧レベル 0 dB」を定めているのか、注意する必要があります。

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Last updated 13.Apr.2015 , © S.Konno 2015 All rights reserved. [ 戻る ] [ HOME ]