書籍:超光速への道 > §1.4 本書の構成 :立ち読み!

要するに、光速突破の糸口をつかむために、今一度、初歩的な物理を基礎の基礎から見つめ直してみようという趣旨である。 申し訳ないが、光速の超えかたそのものは書いていない。 しかしながら、この本を読んだ人が、将来において、光速突破を成し遂げるための、初めの一歩となることだろう。

所々に問題を配した。 これらは知識の確認というよりは、本来ならば本文とすべき内容である。 一方的に語られるのも面白くなかろうと思い、問題型式にしたものだ。 後の本文で解答の一部を利用するものもあるので、全部トライしてもらいたい。

2章では、高校物理のレベルで「質量」とは何かについて考えてみる。 とくに、物理に苦手意識を持っている人たちのために、学校の教科書では通常省略されてしまう「物理の考え方」について説明する。 そしておそらく普通に考えて最もシンプルな質量の定義に至るであろう。 そこから振り返って眺めると、ニュートンの力学3法則が如何に巧妙に仕組まれているのかが見えてくる。 質量と重力の関係、質量とエネルギーの等価性についても触れる。 電磁気学で得られた関係式を通して、おそらく他のどの本よりも最短で相対性理論の世界へと招待する。

3章では、慣性の法則を取り上げる。 慣性の法則はニュートンの第1法則とも呼ばれ、最も基本的な物理法則である。 しかし、 辞書を引いてみるとわかるが、慣性の法則とは「慣性系において…」とあり、慣性系とは「慣性の法則が成り立つ…」となっており、 論理が堂々巡りになっていて考えれば考えるほど結局それが何なのかわからなくなる。 極めて基本的な部分が曖昧なままになっているのでは混乱するので、慣性系についての考え方をいくつか提案する。

4章では、その後の計算の基礎とするために、「ハミルトンの原理」について説明する。 多くの教科書では「最小作用の原理」と呼ばれている。 物理法則は測定で得られた数値と数値の間の関係を表す複数の数式で表現されることが多いが、 これはそれらを“作用(action)”と呼ばれるたった一つの量を示すことで表現するためのツールである。 なお、高校物理の最後あたりで、物体の運動は波動を伴うという話に出会うが、 この章を読めば、投げたボール等の物体の運動が波動のような形にも表現できることに気づくであろう。 話の進めかたとしては高校物理の手法に倣い、歴史上の発展の順番を踏襲する。

5章では、電磁気学の初等的な紹介。 高校から大学初年度までに習う電磁気学の数々の法則は、少々のモデル設定を許すならば、 実は微積分すら使わずに簡単な3つの法則に集約される。

  1. クーロンの法則
  2. ローレンツ力
  3. ビオ=サバールの法則

これらをちょっといじるだけで、なんと、光の速さが特別な速さであることが見えてくる。 高校や大学初年度で習う電磁気学は、工学的な色彩も強く、結果の羅列になりがちである。 それらに対して本章では理学的なアプローチに徹して、ロジックの中心となる道筋を示す。

6章では、電磁場の基礎方程式である「マクスウェルの方程式」を、いろいろな表現で表してみる。 ここで提供される様々な道具類をマスターすれば、一般相対性理論へすぐに手が届くところまでに至るであろう。 一般相対性理論は時空の幾何学であると声高に宣伝されるが、 それ以前の電磁気学の時点で既に時空4次元空間の中に時空2次元面の束を埋め込む幾何学をやっているのだと気づかされる。 本章あたりから計算がきつくなってくるが、がんばって欲しい。

7章では、電磁場のエネルギーと運動量について触れる。 電場や磁場にも空気と同じように圧力があり、エネルギーや運動量をも備えた“モノ”であることを実感していただく。

8章では、6章で鍛えたマクスウェル方程式から電磁場の対称性を見出す。 ここでいよいよ時間だとか空間だとかの話になる。 つまり、特殊相対性理論の導入がテーマだ。 相対性理論が理論的には電磁気学の自然な延長である事が見て取れるであろう。 そして、光を追い越すことはできないものの、光に追いつかれない方法ならリアルにあることを知るだろう。

9章では、8章に引き続き特殊相対性理論がテーマではあるが、 電子などの素粒子の状態を記述するための基本となるスピノルの扱いについて触れる。 スピノルとはいわばベクトルの平方根のような量である。 通常はモノが一回転すると元に戻るのだが、 スピノルはメビウスの輪を辿るように、2回転で元に戻る性質がある。 実は、これは、時空を分類するときに強力な武器となる。

10章では、乗り物などの加速で得られた重力と、星などによる万有引力がもたらした重力の見分けかたを明らかにする。 そこから、重力場の方程式を導出し、一般相対性理論への足がかりとする。

11章では、時間の流れの極めて僅かなムラが重力を産み出すことを紹介する。 「地面が常に上向きに加速しているのに、どうして地球は加速膨張していないのか?」 という問いに答えることができるようになるだろう。 そして、重力の理論と、電磁場の対称性の帰結である相対性理論がどのように組み合わさって整合するか、 について紹介する。

12章では、11章に引き続き、相対論的な重力場の方程式とされる、アインシュタイン方程式を導出する。 加えてそれらの方程式のタネとも言える作用を示す。

※ 13章の説明は、略されている。本を買って読まれたし。

. Last updated 27.Jun.2022 [ この本のトップページへ戻る ] [ 今野へのメール ] [ 今野のプロフィール ]