書籍:超光速への道 > §11.5 重力加速度の行方 :補足、いきなりアインシュタイン方程式!

補足、いきなりアインシュタイン方程式!

連載では、重力加速度と接続\(\Gamma\)との関係が明らかになった段階で、共変微分や曲率テンソルの説明をすっ飛ばして、 アインシュタイン方程式の作用の構成へと移行した。

本書では、張り切って詳しく説明しすぎたせいで、そういうスピード感が損なわれてしまったようである。 そこでここでは、(式10.16)をもとに、§11.5で得られた対応\(\vec g \simeq ( -\Gamma^1{}_{00}, -\Gamma^2{}_{00}, -\Gamma^3{}_{00})\)から、 電磁場と整合する重力場の方程式すなわちアインシュタイン方程式を導出してみよう。

ここで、\(\Gamma\)につき、(式11.7)はいったん忘れて、それが作用から導出されるようにする。 但し、トーションフリーと座標変換の変換則 (式11.33)は、前提とする。 なお、(式11.33)は、(式11.7)より容易に確認することができる(⇒P325,326)。

この補足は、本を買ってから読んでください。(図書館に置いてもらって、借りて読むという手もある。)

ニュートンの重力理論の意味での重力場の作用は(式10.16)で与えられた。 ここではこれを計量テンソル\(g_{\mu\nu}\)と接続\(\Gamma^\mu{}_{\nu\rho}\)を使った表現に書き直してみよう。

計量テンソル\(g_{\mu\nu}\)が重力ポテンシャルの役割も担うことがわかり、 接続に関しては局所慣性系で、\(\Gamma\)が全てゼロでも、その微分はゼロではないという意味で、 重力加速度との対応が、\(\vec g \simeq ( -\Gamma^1{}_{00}, -\Gamma^2{}_{00}, -\Gamma^3{}_{00})\) として求められた。これらから重力場の作用\(S_g\)は以下のような形に書かれるであろう。 \begin{eqnarray*} S_g=\int^{(4)}\;(計量g_{\mu\nu}の関数)\;( 接続\Gammaの微分 + 接続 \Gamma の2次式)\; d^4x \end{eqnarray*} ここに、“大きな数\(A\) ”は出てこないのだけれども、差し当たり式の中に含まれる \(c^2\) 程度の数がそれに相当すると思って欲しい。

(式10.16)により、“接続\(\Gamma\)の微分”のパートには、\(\vec \nabla\cdot\vec g=-\Gamma^i{}_{00,i}\)が含まれるべきである。 座標変換\(x^\mu \Leftrightarrow \hat x^{\hat \nu}\)が線型変換、 すなわち、\(x^\mu{}_{,\hat\nu\hat\rho}=0\) であるとき、接続\(\Gamma\)はテンソルとして振る舞うから、 この座標変換に対しては\(-\Gamma^i{}_{00,i}\)はテンソルとして振る舞うべきである。 つまりこれはテンソルの\(00\)成分として評価されるべきである。

言い換えると、時間を秒で表しても分で表しても方程式は同じであるべきである。 つまり、計量の一部 \(g_{00}\;dx^0 dx^0\)と同様に、\(-\Gamma^i{}_{00,i}\;dx^0 dx^0\)という積を考えて、 秒を分に直すと\(dx^0\)が60分の1に直されるから、 \(-\Gamma^i{}_{00,i}\)は、\(60^2\)倍されるべきである。 つまり、\(-\Gamma^i{}_{00,i}\;g^{00}\)という積にしておけば、この差異は吸収される。 線型変換に対しては、どちらもテンソルの\(00\)成分だから、作用の中の被積分関数として、 \(-\Gamma^i{}_{00,i}\) が含まれる項は、\(c\sqrt{\ } \; g^{\nu\rho}(-\Gamma^\mu{}_{\nu\rho,\mu})\;\) となるべきである。 こうしておけば、座標変換が線型変換であるときには、これはスカラー密度として振る舞う。 ここに、基本密度\(\sqrt{\ }\)が入っているのは、4元体積要素との積\(\sqrt{\ }\;d^4x\) がスカラーになるためである。

これが、一般の座標変換\(x^\mu \Leftrightarrow \hat x^{\hat \nu}\)に対してもスカラー密度になるようにしてみよう。 実は作用の被積分関数(ラグランジアン密度)には、\(X^\mu\) を任意のベクトル密度として \(X^\mu{}_{,\mu}\) を付け加える任意性は残されているが、 作用を組み立てるに当たり、計量\(g\)と接続\(\Gamma\)が独立な量であることを前提としているので、その任意性は活かされない。 言い換えると、座標変換に伴い \(\Gamma\) から生じた\(x^\mu{}_{\hat\nu\hat\rho}\)や、\(x^\mu{}_{\hat\nu\hat\rho\sigma}\)を含む項は、 計量\(g\)を搦め捕った形で\(X^\mu{}_{,\mu}\) の形にまとめ上げることはできない。 なぜならば、計量\(g_{\mu\nu}\)の具体的な関数の形はこの段階では未定だからである。 ゆえに、作用の被積分関数(ラグランジアン密度)は、スカラー密度にまとめるほか無い。

\(\Gamma\)の変換則(式11.33)を見て欲しい。 座標変換によって、微分項\((-\Gamma^\mu{}_{\nu\rho,\mu})\;\) から元の座標を新しい座標で3回微分した項が生じる。 これは\(\Gamma\)の2次式を付け加えても打ち消すことはできない。 ゆえに、これを打ち消すような\(\Gamma\)の微分項をさらに付け加える必要がある。 その候補は、\(\Gamma\)がトーションフリー\(\Gamma^\mu{}_{\rho\nu}=\Gamma^\mu{}_{\nu\rho}\)であることにより、一意に定まる。 \begin{eqnarray*} c\sqrt{\ } \; g^{\nu\rho}(-\Gamma^\mu{}_{\nu\rho,\mu}+{3階微分を打ち消す項}) = c\sqrt{\ } \; g^{\nu\rho}(-\Gamma^\mu{}_{\nu\rho,\mu}+\Gamma^\mu{}_{\nu\mu,\rho}) \end{eqnarray*} ここに付加した項につき、計量テンソルは対称\(g^{\nu\rho}=g^{\rho\nu}\) だから、 \(\Gamma^\mu{}_{\nu\mu,\rho}\)と\(\Gamma^\mu{}_{\rho\mu,\nu}\)の別を気にする必要はない。 これで、座標変換に伴い生じる旧座標を新座標で3回微分した項は相殺(差し引きゼロに)できる。

この付加された項\(\Gamma^\mu{}_{\mu\nu}\)であるが、もしもこの\(\Gamma\)が計量条件(式11.7)を満たすとした場合には、 トーションフリーを前提に、以下のようになる。 \begin{eqnarray*} \Gamma^\mu{}_{\mu\nu}=(\ln\sqrt{\ })_{,\nu} \end{eqnarray*} つまりこれは、基本密度が定数の場合には恒等的にゼロになる量である。 言い換えると、座標の目盛りの密度の増減を表しているような量なので、物理的な意味を担うことはないであろう。

次に\(\Gamma\)の2次の項を考えてみよう。 これは作用の被積分関数(ラグランジアン密度)がスカラー密度になるようにするというだけでなく、 作用を\(\Gamma\)で変分したときに(式11.7)を導くようにするという役割も担っている。 意味を考えつつ求めてもよいのだが、ここは潔く力技で攻めてみよう。 \(\Gamma\)の2次の項は、線型変換では\(\Gamma\)がテンソルになることを踏まえて、3通りしかありえないので、 以下に定める\(R\)がスカラーとなるように、定数\(C_1,C_2,C_3\)を定めてやればよい。 \begin{eqnarray*} R=g^{\nu\rho}(-\Gamma^\mu{}_{\nu\rho,\mu}+\Gamma^\mu{}_{\nu\mu,\rho} + C_1 \Gamma^\alpha{}_{\beta\nu}\;\Gamma^\beta{}_{\alpha\rho} + C_2 \Gamma^\alpha{}_{\nu\rho}\;\Gamma^\beta{}_{\beta\alpha} + C_3 \Gamma^\alpha{}_{\alpha\nu}\;\Gamma^\beta{}_{\beta\rho} ) \end{eqnarray*} これに座標変換(式11.33)を適用し、\(R\)がスカラー量であることにより、\(C_1=1,\ C_2=-1,\ C_3=0\)を得る。

以上により重力場の作用は、\(\kappa\)を定数として以下のように書かれる。 \begin{eqnarray*} S_g &=& \kappa\int^{(4)}R_{\nu\rho}\;g^{\nu\rho}\sqrt{\ }\;d^4x \\ R_{\nu\rho} &:=& -\Gamma^\mu{}_{\nu\rho,\mu}+\Gamma^\mu{}_{\nu\mu,\rho} + \Gamma^\alpha{}_{\beta\nu}\;\Gamma^\beta{}_{\alpha\rho} - \Gamma^\alpha{}_{\nu\rho}\;\Gamma^\beta{}_{\beta\alpha} \end{eqnarray*} これを\(\Gamma\)で変分すると、P354 に記した計算を経て、ハミルトンの原理 \(\delta_\Gamma S_g=0\) が計量条件(式11.7)を与えることがわかる。

ここから(§12.2, §12.3)の論理に従い、定数\(\kappa\)が定まり、アインシュタイン方程式が導出される。

. Last updated 31.Jly.2022 [ この本のトップページへ戻る ] [ 今野へのメール ]