(更新日:1998年12月14日)

高校生のための相対性理論の講演会

第1回〜4回 実施報告

今野 滋

(BUTURIサークルほっかいどう サークルニュース投稿記事より)
 私自身の、物理の教え方の勉強を兼ねて、高校生に相対論を教える企画を進めています。テキストを作り、高校生に見てもらい、講義を進めています。演示実験などで身近に見せることのできない「理論」を、どうやって教えるかということで、とても勉強になっております。大学・高校の素晴らしい卓越した先生方の、ご意見、ご教示、ご協力を賜り、何とか発展し続けております。お世話になりました先生方には、とても感謝いたしております。

 テキストに関して、ひとつの目標は、物理の何か派手な分野の学習を目標とした大学受験参考書を作る。というものでした。しかし、実際に作成してみたら、そのもくろみにはかなり無理がありました。もし、物理の概念をゼロから説明するとなると、少なくとも高校の教科書以上の厚さになってします。そこで、やはり、相対論そのものに焦点を絞らなければならないという考えに変わりつつあります。

 作成中のテキストは、本編と問題編から成り、本編の方は、インターネットで公開しております。場所は

http://www.ec.hokudai.ac.jp/~s987801/edu/
です。内容は、まだまだ、完成までには遠いですが、ぜひ、笑覧いただき、ご意見、ご感想など頂けましたら幸いです。印刷、コピー等は自由ですが、著作権は主張させていただきます。営利を目的とした配布はご遠慮ください。問題編の方は、現在のところ、全て大学入試問題と、その解説からできております。これは公開しておりません。

 講義の実施後には、必ずアンケートをとり、内容に反映させるよう努めております。

=アンケート結果(第1回〜第4回の共通項目)=

Qあなたが、相対論の講演を受講した動機は何ですか?
面白そうだったから(多い答え)。興味があったから(多い答え)。友人の紹介。前からこのテーマに興味があった。自己啓発のため。物理の先生の紹介。2年で物理を選択する予定だから(1年生)。他の人よりもいろいろなことを知りたいから。
Q高校生が相対論を学ぶのは早すぎますか?
全員が、早くはな いという答えでした。 このテキストぐらいの程度なら大丈夫という意見もありました。
Q次回もまた聞きたいですか?          全員がYes。

<第1回実施状況>

実施日 : 1998年10月18日
参加者数 : 8人(高校教員1名、予備校生2名、高校3年生1名、高校2年生3名、私)
講義内容 : 全体の説明/光の速さと測定/光速の不変性/時間の遅れ
 事前に参加の連絡があったのが3名と、とても心細い状況でしたが、 当日、生徒の参加者が6人となり、まずまずのスタートとなりました。 これも、ひとえに私がお世話になっている高校の先生方のおかげであります。 講義内容に関しては、用意したテキストに沿って、進めていきました。  問題編に関しては、さすがに解法などの解説をすることは、3時間という限られた時間内では無理でした。

 アンケートの結果を読みとると、私の作ったテキストは、講義による解説を要し、 まだ参考書としては自立していないようです。また、受講の動機は、以前から相対論に興味を持っていたことがあげられ、 高校物理を楽しく学ぶための相対論という私の意図からは外れたものでした。 高校生は一般に集中力が長くは続かないものですが、 かなり、しっかり食いついてきてくれていました。 聞きに来た高校生のみなさんの熱心さに感謝いたします。 私自身の日頃の講義の進め方の欠点がわかったことも収穫でした。 代ゼミではアンケート結果を、めったなことでは講師に教えてくれないのです。

=アンケート結果(第2回目の結果を兼ねる)=

回収率:4/6

Q参加者の志望大学

Q講義の感想 Qテキストの感想 Q演習問題に関して


<第2回実施状況>

実施日 : 1998年11月1日
参加者数 : 5人(高校教員1名、高校3年生1名、高校2年生2名、私)
講義内容 : ローレンツ収縮/光の速さは超えられるか?/E = mc^2の導入
 残念ながら、前回と比べて参加者が3名減ってしまいました。 新しい人は来ていませんでした。宣伝不足に重ねて、 修学旅行シーズンが重なってしまったためと、推定されます。 何はともあれ、前回のアンケートを今回のアンケートを兼ねて、7割回収できたのが収穫でした。

 参加者が少なかったこともあり、進度を遅くしました。 テキストの内容を無理押しするよりも、集まったみなさんに、 自由に語っていただくことに重点を置いてみました。

 光速度が物理的な最高速度であることを、 物質が電磁気的な力で結びついている事で説明しました。標準的な導入としては、速度合成の公式を使うのですが、物理的な意味をつかんでもらいたかったので、この方法を採りました。参考事例として、かつて、音速が超えられないと思われていたことについて触れました。 このテーマについては、理解し、興味を持ってもらえたようです。 物質の結びつき強調するために、鉛を圧着する演示実験を見せました。 鉛を、平面が出るように切り、平面同士で圧着すると、くっつきます。 生徒の反応は、今まで見たことがが無いとのことで、楽しんでもらえたようです。

 E = mc^2の説明もしましたが、 時間切れのために、詳しく解説ができませんでした。


<第3回実施状況>

実施日 : 1998年11月15日
参加者数 : 9人(高校2年生5人、高校1年生3人、私)
講義内容 : 光の速さと測定/光速の不変性/ウラシマ効果
 お世話になっている先生の心強いご協力を頂き、参加者の人数が増えました。メンバーがだいぶ変わったので、もう一度初めから説明しました。アンケートの最後の項目で面白い結果が出ました。

=アンケート結果=

Q志望大学 Q相対論の講義の感想(全般)はどうですか? Qテキスト(本編)の感想 Qテキスト(問題編)の感想はどうですか? Q科学の最先端を学びたいですか?Yes なら、下記 a b の、どちらのタイプの本が良いですか?
  a) 絵や写真が大きくて奇麗だけれども、内容が無いよう!
  b) ごまかさずに、きちんと理解できるけれども、読むのに根性が要る。

<第4回実施状況>

実施日 : 1998年12月13日
参加者数 : 8人(教員1人、高校2年生5人、高校1年生1人、私)
講義内容 : 図を大幅に増やしたために、もう一度、改良点を重点に初めからおさらいしました。
光の速さと測定/光速の不変性/時空の長さの修正/光の速さは超えられるか?/E = mc^2の導入
 今回の山場は、E = mc^2の解説の筈だったのですが、新しく書き足した図の説明に熱が入ってしまい、時間が足りなくなってしまいました。反省。E = mc^2の導入に関しては、高校の教科書のように、公式を適用することに専念するのではなく、導出を試みています。最も標準的な導出法方からは外れて、アインシュタインの初期の論文にそくした論理で説明する方針をとってみました。自分が高校生だったときに、後者の方がわかりやすかったからです。このやり方で、今時の高校生が理解・納得するかどうかを試してみるという点で、とても興味深いです。今回はできませんでしたが、次回に優先的に講義してみます。

 テキストの作成進度は、特殊相対論の2大原理のうち、光速度不変性に関しては、だいたい姿が現れてきました。原理自体の説明に関しては、わかりやすく書けたようです。後半に原理の応用として、時空のスケールの修正/光速度の物理的な最高性/E = mc^2 を採り上げたのですが、論理が複雑だったり、計算が多かったりで、難しい印象を与えてしまったようです。何よりも、日常の体験と関連づけて説明する努力が必要であると思われます。この点の改善は、今後の課題です。
 改良点として、図を増やしたのですが、図解の効果は大きいものがあったようです。

=アンケート結果=

回収率:5/6

Q志望大学

Q相対論の講義の感想(全般)はどうですか? Qテキスト(本編)の感想はどうですか? Q今回は問題編を省きましたが、やっぱりあったほうが良かったですか? Qテキストの内容について、学校の理科や数学の授業との関連がはっきりしていた方が良いですか? Q人類が超光速に挑戦することは(あまりにも無謀ですが)、重要なことだと思いますか?
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